足掛け3年、全3部13回の大作が昨年末終了した。連ドラではないのでドラマオブザイヤーの候補外ではあるが、そのクオリティーは突出しており、司馬遼太郎の原作をドラマ化したNHKの気概が充分に感じられた。
映像へのこだわり、荘厳な音楽、綺羅星のようなキャスティングもさることながら、明治日本の躍動感や日露戦争の薄氷を踏む苦労がドラマを通して十二分に感じられる。正岡子規との親交、日本海海戦におけるT字戦法などもよく表現されていたが、このドラマの山場はやはり旅順攻略戦だと私は思う。
児玉源太郎(高橋英樹)が第3軍司令部に越権行為ともいえる進言をする以下の場面が印象的だ。
児玉「二つ、二〇三高地占領の上は二八糎榴弾砲をもって、一昼夜一五分ごとに連続砲撃を加え、敵の逆襲に備うべし」
参謀「二八糎砲をもって 一昼夜一五分間隔でぶっとおしに二〇三高地に援護射撃を加えよと仰いましたか?」
児玉「うむ、言うた」
参謀「となれば、味方を撃つ恐れがあります。恐れというよりその公算大であります」
児玉「そこをうまくやれ」
参謀「陛下の赤子を陛下の砲をもって撃つことはできません!」
上の「陛下の赤子」発言、よくも言えるなぁと思ったが、ここで児玉は烈火のごとく怒るのである。
「陛下の赤子を無為無能の作戦によって、徒に死なせてきたんは誰か!これ以上、兵の命を無益に失わせんよう、ワシは作戦転換を望んじょるんじゃ!」
「援護射撃は、なるほど、玉石ともに砕くじゃろう。じゃが、その場合の人命の損失は、これ以上、この作戦を続けて行くことによる、地獄に比べれば、はるかに軽微じゃ!」
「援護射撃は危険じゃっちゅうその手の杓子定規の戦略で今までどんだけの兵が死んできたんか…」
最後は児玉も目に涙をため、声を震わせながらの発言である。
もちろん乃木軍が苦心惨憺していることは分かる。だが、この場合結果が出なければ何の意味もなく旅順攻略の第三軍どころか大陸で展開する数十万の兵、ひいては日本全体の存亡がかかっていることを第三軍の参謀は理解していない。
児玉が旅順に向かう列車の中で要塞攻略で戦死した兵の墓標を線路沿いに並べていることに対する不見識ぶり(投入される増援兵はコレを見て何を思うか?)を大庭中佐にぶちまける場面もそうだが、目の前の戦況に拘泥するあまり大局がまるで見えていない。
作戦転換後の総攻撃でなんとか二〇三高地を奪取し、霧が晴れて旅順港が見えた場面・・・泥だらけの兵士がある者は白い歯を見せて抱き合い、ある者は嗚咽する場面はドラマ史上に残る名場面だと思う。
